FX(外国為替証拠金取引)にはさまざまなトレード手法がありますが、その中でも特に短時間で売買を繰り返す「スキャルピング」は、初心者にも人気の高い手法のひとつです。
この記事では、スキャルピングとはどのような手法かを、初心者でもわかるように必要な知識、メリット・デメリット、実際のやり方までを詳細に解説します。
スキャルピングとはどのような手法か
まずは、スキャルピングがどのようなトレード手法を指しているのか、基本的な定義などから解説していきます。
保有時間は短く、細かい利益を積みかな寝ながら、繰り返し取引を行うのがスキャルピングです。
ポジション保有時間 | 数秒~数分 |
取引回数 | 1日数10回~数100回 |
1回の獲得Pips数 | 1Pips~5Pips前後 |
スキャルピングの基本定義
スキャルピングではポジションの保有時間は数秒〜数分という非常に短い時間です。
この短時間でトレードを完結させる超短期売買のトレード手法のことを『スキャルピング』と呼びます。
保有時間が短いため、1回あたりに獲得できる利益も決して多くはありませんが、小さな利益をコツコツ積み上げるスタイルです。
スキャルピングの語源
スキャルピングの語源は、英語の”scalp”(頭皮を剥ぐ)から来ています。
頭皮を剥ぐというと非常に怖い印象ですが、小さな利益を積み重ねていくスキャルピングが薄皮を剥ぐようなイメージであることから来ています。
デイトレード・スイングトレードとの違い
トレードスタイルは分類すると、スキャルピング、デイトレード、スイングトレード、長期トレードの4つに分かれます。
それぞれのスタイルの比較は次の表をご覧ください。
スタイル | 保有時間 | 取引回数 | 獲得利益 |
スキャルピング | 数秒~数分 | 1日数十回以上 | 数Pips |
デイトレード | 数分~数時間 | 1日数回~数十回 | 数Pips~数十Pips |
スイングトレード | 1日~数日 | 週数回 | 数十Pips~数百Pips |
長期トレード | 数日~数週間 | 月数回 | 数百Pips以上 |
獲得利益は値動き次第ですので、あくまでもイメージですが、基本的には保有時間が長いほど獲得できる利益も大きくなっていきます。
どのスタイルにもメリットやデメリットはありますが、短時間での取引回数が多いスキャルピングは、より即断即決の判断力が求められるスタイルと言えます。
スキャルピングに向いている人の特徴
では、スキャルピングに適しているトレーダーはどんなタイプなのでしょうか。
次にあげる点が当てはまるトレーダーはスキャルピングに向いていると言えます。
- パソコンやスマホに張り付ける人
- 短期勝負が得意な人
- 感情をコントロールできる人
- テクニカル分析が好きな人
1. パソコンやスマホに張り付ける人
スキャルピングは秒単位で相場を見て反応するしなければいけないので、常にチャートを見続ける必要があります。
つまり、トレードを行う数時間は画面に張り付いてチャートを監視し続けることが求められるわけです。
トレード中は常にチャートを見続けることが苦にならないというトレーダーは、スキャルピングに向いていると言えます。
スキャルパーの中には、限られたチャンスを逃さないために、食事や入浴の時間もチャート監視を続け、トレード中はトイレすらいかないというのも決して珍しくないほどです。
2. 短期勝負が得意な人
それぞれのトレードを経験するとなんとなくわかってくることなのですが、結果が早めに知りたいトレーダーはスキャルピングが向いていると言えます。
例えば、スイングトレードや長期トレード目的でポジションを保有したにもかかわらず、値動きや損益がどうなっているか気になって数十分おきにチャートを見てしまうような人は短期向きです。
スキャルピングでは瞬時の判断が求められますので、スピード感や即座の反応に自信がある人も向いているでしょう。
3. 感情をコントロールできる人
これはスキャルピングに限らずですが、トレードにおいて感情がコントロールできないと思わぬ損失を出してしまうことになります。
特にトレード回数の多いスキャルピングでは、損切が続いた後にムキになって無理なトレードを繰り返して傷口をさらに広げるということが起こりやすいと言えます。
私もこれで何度やられたかわからないくらいです。
一度負けると熱くなって『次は取り返してやろう』『一発逆転を狙おう』という考えになりやすいトレーダーはスキャルピングは向いていないと言えます。
常にルールを守り、決められた手順通りにトレードできることがスキャルピングでも大事です。
4. テクニカル分析が好きな人
スキャルピングは超短期取引なので、ファンダメンタル分析はほぼ通用しません。
目の前の値動きを見極めながらトレードを繰り返すので、テクニカル分析を中心に値動きを追っていくことになります。
そのため、テクニカル分析の方が好きというトレーダーに向いているのがスキャルピングと言えます。
分析方法やエントリー方法、使用するインジケーターなどは、トレーダーの好みが出る部分ですので、自分なりのスタイルを見つけるのがベストです。
スキャルピングに必要な基本知識
スキャルピングのスタイルが理解できたところで、これからスキャルピングを行うならば最低限知っておいた方が良い基本知識をまとめました。
すでにトレード歴が長い方は当然理解している内容かと思いますので、そのような方は飛ばしてください。
1. テクニカル分析の理解
スキャルピングではファンダメンタルズよりもチャート分析が重視されますので、最低限次のインジケーターの見方や使い方は理解しておいた方が良いでしょう。
必ず全部見なくてはいけないというものではありませんが、それぞれを理解したうえで、自分に合ったものをチャートに表示しておくと便利です。
- 移動平均線(MA)
- ボリンジャーバンド
- RSI(相対力指数)
- MACD
- 一目均衡表
ちなみに私、Y室長はメインチャートに移動平均線(5日、14日、75日)を表示し、下段にRSIを表示して普段はトレードしています。
詳しい使い方などを知りたい方はヒロセ通商のホームページなどで載っていますので、リンクを貼っておきます。
2. 通貨ペアの特性
トレードをする通貨ペアにもさまざまな特徴があります。
基本的な特徴を知っておくとトレードをする際に役立つことも多いので、メジャー通貨の特徴は知っておくようにしましょう。
USD/JPY | EUR/JPY | GBP/JPY | |
流動性 | 大きい | 大きい | 大きい |
特に動きやすい時間帯 | 日本時間、ニューヨーク時間 | ロンドン時間 | ロンドン時間 |
スプレッド(LION FX) | 0.2Pips | 0.4Pips | 0.9Pips |
特長 | 国内の取引量が多く、値動きゆるやか | トレンド方向に動きやすい | ボラティリティ大きめ |
例えば、日本円(JPY)なら、午前9時の株式市場のスタートとともに市場参加者が増えていき、それに合わせて値動きが激しくなってきます。
そして、9時55分の仲値に向けて盛り上がっていく傾向があります。
こうした特徴を知っておけば、チャンスを逃さずエントリーすることができるのです。
また、スプレッド(売買価格の差)が小さく、流動性が高い通貨ペアを選ぶのも重要です。
迷ったらまずはドル円から始めることをおすすめします。
なぜドル円を選択すべきかは次の記事を参考にしてください。
3. 注文の種類
注文方法も基本は理解しておく方が良いでしょう。
成行注文・・・現在の値段で売買する
指値注文・・・指定した価格で売買する
逆指値注文・・・指定した価格になると成行発注される
ただし、短時間で売り買いを繰り返すスキャルピングでは基本成行注文のみで問題ないです。
急な値動きに備えて損切を自動で設定しておく場合は、あらかじめ発注と同時に指値注文も出るようにするのも良いでしょう。
4. 経済指標の影響
米国の雇用統計やCPIなど、市場の注目の大きい経済指標などが発表されると、価格は大きく動くことがあります。
あらかじめ経済指標が発表される時間を把握しておくことで、突発的な値動きに巻き込まれないようにしておくことが重要です。
また、大きな指標発表前後は無理してエントリーしないことも大事です。
スキャルピングのメリット
スキャルピングには次のようなメリットがあります。
- リスク管理がしやすい
- エントリーチャンスが多い
- 資金効率が良い
1. リスク管理がしやすい
スキャルピングはリスク管理がしやすいと言えます。
なぜならば、ポジションの保有時間が短いので、相場の急変などに巻き込まれにくいからです。
また、損切も素早く行うため、傷口が広がる前に逃げ切ることも可能です。
こうしたことからスキャルピングはリスクを抑えられるトレード手法と言えます。
2. エントリーチャンスが多い
短時間で売買を繰り返すスキャルピングは、それだけエントリーチャンスが多いと言えます。
もちろん闇雲にエントリーしても損失が膨らむだけですし、ボラティリティの低い日はエントリーチャンスがないこともあります。
ただし、スイングトレードや長期トレードに比べると、はるかにエントリーチャンスは多いと言えます。
3. 資金効率が良い
スキャルピングは他のトレードスタイルに比べると資金効率も良いと言えます。
それは、超短期だからこそレバレッジを最大限に活かすことができるからです。
また、利益をすぐに次のトレードに回せるので、それだけ複利の効果も高いです。
以上のことからスキャルピングは資金効率の高いトレードスタイルというわけです。
スキャルピングのデメリットとリスク
メリットがあればデメリットもあるのですが、次の点が挙げられます。
- 精神的負担が大きい
- 手数料(スプレッド)の影響を受けやすい
- 約定力が重要
1. 精神的負担が大きい
トレード回数の多いスキャルピングでは、目まぐるしく利確と損失が入れ替わるので、ストレスもたまりやすいです。
また、トレード中常にチャートを見続けなくてはいけないので、そうしたストレスも感じやすいです。
ただし、どんなトレードスタイルでもエントリー後に逆行すればストレスは感じますので、すぐに損切するスキャルピングの方が過度なストレスはないとも言えます。
私、Y室長は長期トレードの深い損切よりも、スキャルピングの浅い損切の繰り返しの方が、ストレスが少なく、自分には合っていると感じています。
2. 手数料(スプレッド)の影響を受けやすい
スキャルピングはトレード回数が多い分、スプレッドの影響を非常に受けます。
スプレッドは手数料のようなものですが、積み重なるとそれなりの額になるので、少しでもスプレッドの狭い業者を選ぶことは大事です。
ただし、大変ありがたいことに、近年の国内FX業者の多くがスプレッド0.2Pipsほどでサービスを提供してくれているので、比較的コストは抑えたトレードが可能です。
3. 約定力が重要
スキャルピングは短時間勝負だからこそ、注文が通らないとタイミングを逃し損失になる可能性もあります。
約定力の影響を受けやすいことはデメリットとも言えますが、約定力の高い業者を選べば特に気にする必要もありません。
スキャルピングの始め方
実際にスキャルピングを始めるにあたって、トレードするまでのステップを4段階に分けて解説いたします。
ステップ1:スキャルピングに適したFX業者を選ぶ
まずは口座を解説しましょう。
スキャルピングをするならば、次の条件を満たしている業者を選ぶのがベストです。
- スプレッドが狭い
- 約定力が高い
- 約定スピードが速い
- 取引ツールが高機能
スキャルピングに最適なヒロセ通商のLION FXについては次の記事を参考にしてください。
ステップ2:デモトレードで練習する
デモトレードには賛否がありますが、実際の資金でいきなりトレードをすることに抵抗のある方は、まずはデモトレードで練習してみるのが良いでしょう。
ツールの操作方法や価格の動き方など、実際の資金をリスクに晒さなくても、多くのことを学ぶことができるのがデモトレードです。
ステップ3:トレードプランを立てる
実際にエントリーする前にはトレードプランを立てましょう。
上位足は上昇トレンドなのか下落トレンドなのかを事前にインプットしておくことで、買い中心のトレードで攻めるか売り中心のトレードで攻めるかなどがきまります。
また、節目や抵抗帯などが近くにあれば、意識される可能性があることもインプットしておくことで、トレードが有利になることも多くあります。
次に損切や利確のルールなどがあれば、それも予め頭に入れておきましょう。
- トレンドの方向
- 節目や抵抗帯の位置
- 利確と損切りのルール
- 時間帯の選定(東京時間・ロンドン時間・ニューヨーク時間)
ステップ4:実践トレード開始
トレードルールが定まったら、いよいよ実践スタートです。
まずは少額からスタートし、慣れてき手から徐々に取引量を増やしていきましょう。
具体的なスキャルピング手法の紹介
ここではスキャルピングの基本となるエントリーポイントをご紹介します。
1. ブレイクアウトスキャルピング
ブレイクアウトとは、レジスタンスやサポートとなっているラインを抜けることを指しています。
それまで跳ね返されていたラインを超えるタイミングは、損切なども巻き込みやすいので、勢いよく抜けていくことが多いです。
ブレイクアウトスキャルピングでは、その抜けの瞬間に抜けた方向に追随してエントリーするスキャルピングです。
2. 順張りスキャルピング
順張りスキャルピングとは、トレンドの方向に沿ってエントリーするスキャルピングです。
順張りスキャルピングでは、上昇トレンドでは『買い』、下降トレンドでは『売り』でポジションを持ちます。
主には押し目や戻り高値でエントリーします。
3. 逆張りスキャルピング
逆張りスキャルピングは、買われすぎや売られすぎとなったときにトレンドとは逆にエントリーするスキャルピングを指します。
セリングクライマックスなどに代表されるように、損切を巻き込んで大きく下落したタイミングなどで買いエントリーするのが逆張りです。
私、Y室長は主にこの逆張りのスキャルピングを行っています。
4. インジケーターを使った手法
インジケーターを使う手法はそれぞれの特徴を活かして、買われすぎや売られすぎでエントリーしたり、トレンド転換でエントリーしたりする方法です。
主なエントリーには次のようなものがあります。
- ボリンジャーバンドで±2σにタッチしたときに逆張り
- RSIが70超えまたは30割れで反転を狙う
- MACDのゴールデンクロス・デッドクロスでエントリー
スキャルピングで失敗しないためのコツ
スキャルピングで失敗したくないトレーダーは、次にあげるポイントは最低限心得ておきましょう。
これらはスキャルピングに限らずFXトレード全般で意識すべきポイントとも言えます。
- 感情に左右されすぎない
- 損切りを必ず設定する
- 資金管理を徹底する
- トレード記録をつける
1. 感情に左右されすぎない
目先の損益に一喜一憂し、感情に任せたトレードを繰り返すと、損失につながります。
常に決められたルール通りにトレードすることを心がけましょう。
特にスキャルピングはトレード回数が多いので、一旦感情でトレードし始めると、そのあとのトレードすべてが台無しとなり、思わぬ損失を被ることになりかねません。
2. 損切りを必ず設定する
スキャルピングでは想定の逆を行ったら、すぐに損切をして次に備えましょう。
損切できずにポジションを持ち続けると、次のトレードができなくなってしまいますので、チャンスを逃してしまいます。
3. 資金管理を徹底する
資金効率を高めることができると書きましたが、過度なレバッレジやギリギリの損切などは逆に効率が下がりますので、気を付けましょう。
LOT数や損切額は、資金量を見ながら無理のない範囲に設定しましょう。
4. トレード記録をつける
トレードスキルを向上させるには自分のトレードを振り返ることが一番効果があります。
そのためにはまずトレードの記録をつけましょう。
エントリー前の根拠やどこでエントリーしてどこでイグジットしたかなどを振り返ると、自分の癖や傾向などが見えてきます。
自分の得意パターンが見つかれば、より確実なトレードが可能になります。
スキャルピングにおすすめのツール
ここではスキャルピングをする際に知っておくと便利なツールなどをご紹介します。
1. 高速取引ツール(例:MT4、MT5)
MT4はMetaTrader4のことで、世界で一番利用されているプラットフォームです。
多機能でカスタマイズの自由度が高いことが世界のトレーダーに選ばれている理由です。
MT4に対応している業者ならMT4上で直接トレード可能ですが、対応していない場合でも、MT4で分析を行いながら、注文は口座を開いている業者のアプリで行うなども便利です。
国内FX業者でMT4に対応している業者は少ないので、分析や表示用として利用するのが良いでしょう。
2. 経済指標カレンダー
経済指標カレンダーは様々な方法で確認可能です。
主には、証券会社やFX業者のホームページやアプリで確認できますし、経済ニュースを発信しているサイトなどでも確認できます。
サイトによって、重要度を星の数で表記したり、過去の数値を連続して確認できたりするので、自分に合ったサイトを見つけましょう。
ヒロセ通商のホームページでももちろん経済指標カレンダーの確認が可能です。
3. 通貨の強弱一覧
通貨の強弱を表示しているサイトも非常に便利です。
このサイトを見て、強い通貨と弱い通貨のペアを選べば、よりボラティリティが大きくトレンドが強く出ていることが多いので、チャンスを見つけやすくなることがあります。
通貨の強弱は、OANDA証券のホームページなどが便利です。
スキャルピングの上達法
スキャルピングで上達するには、トレード回数を重ねることと、反省を繰り返すことです。
1. 少額で多くの取引経験を積む
とにかく実戦を積み重ねることで、トレードのコツをつかめるようになっていきます。
また、アプリの操作や値動きに瞬時に対応できるようにもなるので、回数をこなすことは上達には欠かせません。
2. 上級者の手法を真似る
最初のうちは上手なトレーダーの手法をまねるのも良いでしょう。
書籍で解説しているトレーダーも多いですし、最近ではYouTubeでの解説動画も増えていますし、ライブ配信などもありますので、そこからまねてみるのもおすすめです。
3. 定期的に自己評価する
前章でも書きましたが、やはりトレードを振り返ることは非常に役立ちます。
トレード日記とまではいかなくても、簡単なメモでもエントリーや利確の状況を振り返れるようにしておくと便利です。
毎日の振り返りに加えて、月単位などで収益・勝率・平均損益などを分析すると、より自分のトレードを見つめ直せますし、改善点も見つけやすいのでぜひ実行してください。
まとめ
スキャルピングは一見すると簡単そうに見えるかもしれませんが、継続的に勝つには高度な集中力と計画性、そして感情のコントロールが求められます。
初心者のうちは焦らず、デモトレードや上級トレーダーの真似から始めて、徐々に自分に合ったスタイルを見つけていくことが大切です。
トレード毎に振り返りを行い、学習と実践を通してスキャルピングで安定した利益を出せるようになることを目指しましょう。
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